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「危機を好機に」~教育支援などに1.8兆ドル拠出

執筆者の写真: Beyond MediaBeyond Media

Mari Adachi Chief in Editor of Beyond Media


アメリカ時間4月28日夜(日本時間29日の午前10時すぎ)にバイデン米大統領は議場に姿を現した。上下両院合同の会議場は参加議員の数を大幅に絞っていた。おそらく通常の10分の1程度であろう。拍手に迎えられ大統領はゆっくり議場を進んだ。その顔は自信に満ちていた。


29日で就任100日となるバイデン大統領は初めての施政方針演説に臨んだ。


危機と機会 ーー 危機を好機に変え、さらに強いアメリカを目指す

コロナ危機への対応、そして新たな雇用創出、気候変動や格差是正、人種や移民対策など幅広いテーマを網羅しつつ、21世紀型の新しい民主主義によって、強いアメリカが再び始動していくことを宣言した。


演説の大きなポイントはインフラ整備などで雇用創出を柱とする「Jpbs Plan」と、教育や育児を柱とする「Family Plan」の2本。


いずれの政策も財源を示したのが評価できる。


「Jobs Plan」は大企業を中心に増税し、(増税といっても今まで上位55社の多くがタックスヘイブンなどの地域に会社を登記するなどして納税してこなかったので、それを普通に支払ってもらうものだとバイデン大統領は述べた)8年間で2兆ドル(約220兆円)超を投入する。


一方、「Family Plan」は個人富裕層(所得100万ドル以上=約1億1000万円以上)への増税により、10年で1.8兆ドル(約200兆円)を拠出する。


演説の冒頭はバイデン政権のコロナ対策の成果をアピールすることからスタートした。1400ドルを各家庭に配布し、国民生活救済のレスキュープランの実施や、迅速なワクチン接種の整備などを強調した。


「ワクチン接種は全国4万カ所の調剤薬局やコミュニティセンターで受けられます。モバイルでの予約なども整備しました。実に人口の90%が自宅から5マイルの距離で接種が受けられるという態勢を作り上げました」と声高に訴えたバイデン大統領。ワクチン接種への全国規模での整備は見事な采配だ。「車に乗ったままワクチン接種ができる」とも言っていた。日本とは大違いである。


今回の演説の柱の「ジョブズプラン」では第2次世界大戦以降では最大規模のインフラ整備を示した。道路、橋、線路、空港、水道など様々な公共施設の整備、新設により大量の雇用を創出する。


水道管の老朽化で、現在アメリカの1000万以上の家庭は、鉛を含んだ水道水となっているらしい。これらを100%交換すると、バイデン大統領は明言した。


エネルギー効率の高いインフラ投資や農業の活性化、風力発電の増築などにより気候変動にも対応していく。


アメリカ製品をアメリカ人が積極的に購入することはアメリカの雇用をさらに増やすことにつながり、「Made in Ameria」をさらに増やすことができると語った。「Buy American」は決して貿易協定に触れるものではなく、むしろ国家が強くなるものだとした。


また、格差是正についてはトランプ前政権が掲げていた「トリクルダウン理論」(=富める者が豊かになれば、貧しい層も自然に豊かになっていく現象)を完全否定。トランプ前大統領が数年前に実施した大規模な減税政策は結局のところ、富裕層をより豊かにしただけにとどまり、大幅な財政悪化を引き起こしたと非難した。


格差を是正することで「ボトムアップ(=貧困層の底上げ)、そしてミドルアウト(=中間層から成長)」と述べた。


所得40万ドル(約4300万円)以下の世帯の増税はないという。人口の0.3%にあたる所得100万ドル(約1億1000万円)以上の富裕層への増税を考えているというのだ。そうした層への増税が「Family Plan」の財源となる。


義務教育の拡大

教育支援としては従来の12年間の義務教育制度をさらに4年延長する方針だ。下の年齢、つまり幼児教育にプラス2年、そして大学教育に2年を付け足す。


幼児教育はチャイルドケアというより、意味のある教育を施したいという考え方。幼児教育を手厚くすることで、それ以降の教育水準もおのずと上がっていく。サイバーセキュリティなど高度なテック人材も生まれやすくなり、それが貧困をなくし、国全体の競争力を高めることにつながるというものだ。実に素晴らしい。


大学教育は全国にある「Community Collage(公立大学)」を2年間無償で提供することで、これまた、国民の学ぶ意欲もより高まるだろう。世界的な人材競争力も高まる。


また銃規制問題についてはさらなる規制強化を共和党に求めた。これまで連番や登録制度がなかった「ゴースト銃」といわれる組み立て式の銃に対してもメスを入れるべきであることも訴えた。


移民政策については不法入国の親から生まれた子どもたちへの市民権の取得を整備し、幅広い仕事に就けるようにすることが国益となると示した。


中国には負けない

外交政策ではまず対中政策を強調した。


中国が現在リードしている「バッテリー、半導体、クリーンエネルギー事業はいずれアメリカが追い抜くであろう」と語った。


「中国とは紛争を起こすのではなく、紛争を防ぐために対抗していく」とも述べた。さらに人権問題にも触れ、中国をけん制した。


サイバー攻撃や選挙妨害などを引き起こしたロシアに対しても苦言を呈し、イランの核問題及びアフガニスタンの米軍撤退問題にも触れた。


さらに、1月の米連邦議会議事堂の襲撃事件を例にだし、「民主主義は危機にある」としながらも「民主主義がまだ機能していることを証明しなければならない」と訴えた。加えて「専制主義国家が将来、勝ち取ることはできない。米国は力を合わせて戦っていく」と語った。


今回の演説は実にわかりやすく、飲み込みやすいものだった。(前大統領がひど過ぎた、という反動もあるのかもしれないが・・・)。特に教育への支援は期待したい。人種差別や分断はやはり格差社会から生まれる。その根源を断ち切るためには時間がかかっても教育を支援することがとても重要だからだ。


今回の演説を機にアメリカが本当に復活してくれることを切に望む。



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