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執筆者の写真Beyond Media

ミャンマーが正月を祝えるのはいつになるのか

更新日:2022年4月13日

writer Mari Adachi Editor-in-Chief of Beyond Media

ニュースはウクライナ情勢一色だが、世界にはウクライナ以外にも紛争地域、一般市民が犠牲となり続けているところはたくさんある。その一つがミャンマーだ。2021年2月に国軍によるクーデターが勃発し、その後、市民への弾圧は収まるどころか、ますます悪化している。この1年余りで市民の犠牲者(死者数)は1700人を上回っている。


ラジオ「Beyond Media」ではミャンマー在住のMeiさんにの現地の状況を詳しく聞いた。

Q1. 最近のミャンマーの状況は?   

弾圧が続いている。一方で市民の抵抗も続いている。ただ、声をあげる策はあらゆる方法により奪われている。今年の2月1日はクーデターから1年だったが、サイレントストライキ(沈黙のストライキ)が行われた。街の中は完全に無人にはならなかったが、ストライキをそれぞれが決行した。夕方4時がひとまずサイレントストライキの終了時刻だったのがだ、その時には市中から拍手が沸いた。ストライキやり遂げた、という拍手はどこからともなく湧いて、感動した。市民の国軍への抵抗の気持ちは相当強いものだと改めて確信した。


Q2.  毎年3月27日は国軍記念日だが、何か変化は?

去年のこの日はひどかった。デモが盛んだったので、反体制市民の100人以上が殺された悲しい記念日となってしまった。国軍は世界に平常化をアピールしたいので、大々的に軍事パレードなどを開催したが、市民たちは誰一人、歓迎するムードはない。


Q3. 市民たちは声をあげづらい?見えない弾圧も多い?

国軍は勝手に法改正をして、令状なしの逮捕を可能にしてしまった。また国籍抹消や、パスポート没収などを民主化運動を先導している人たちに容赦なくやっている。正直、弾圧はエスカレートしている。例えばヤンゴンではモバイルで募金しただけの人がいきなり逮捕されたりなどの例も起こっている。これはモバイルの振り込みの履歴を軍が勝手にチェックして、逮捕している。また、土地の摂取も突然おこなうなど、弾圧は各地、様々な形でやっている。さらに酷いのは、停電。ヤンゴンでも1日のうち8時間ほどは停電している。元々この季節は雨が降らないので、水力発電の水不足によって、停電は起こりやすい。ただ、これほどの長時間停電ではなかった。この停電も国軍が意図的に市民への弾圧を実施していると、ミャンマーの市民たちは考えている。今、この時期は日中だと40度くらいまで気温が上がるので、とても辛い。また電気で水を汲み上げる家庭も多いので、水も使えなくなりとても不便になっている。

空爆や地雷被害によって野戦病院に次々と運ばれてくる負傷者たち(Meiさん提供) 


Q4. 地方での弾圧はどう?何が起きているのか見えづらくなっている?

地方では武装して国軍と戦っているところがある。ゲリラ戦になっている。地方ではインターネットの切断や制限も多く、実際情報がタイムリーに上がってこない。そんな中、地方ではゲリラ戦とは関係ない場所での空爆も多く、かつてないほど村が燃やされ、死者も増え、難民も多く出ている。今年の2月だけでも3000世帯くらいは焼け出されている。SNSにアップされるのはほんの一部でしかないだろう。情報が把握しずらい。後になって遺体が多く埋められていた、ということも場所によっては存在している。死者というより犠牲者ということから言うと国民はみんな犠牲者だと思う。


Q5. いま世界的にもエネルギーの価格が上がるなど大変だが、ミャンマーの日々の生活はどう?

ガソリンが急騰し、この1年で3倍ほどまで跳ね上がっている。1L=150円くらいなので、月収平均4万円の国としては相当きつい。食料品も高騰している。空爆を受けた地域が農村だったので、農産物に被害が出たり、村ごと焼かれたりしたので、仮に農産物があっても収穫ができない。


Q6. ウクライナに関しては日本国民はかなり同情しているし、心を痛めている。しかし、ミャンマーのことはというとウクライナほど関心は高くないのが現状。日本の人たちに伝えたいことは?

実はウクライナとミャンマーの構造はよく似ている。一般市民が突然平和を奪われた点。ミャンマーの人もウクライナに連帯したい気持ちはあるが、ミャンマーには世界からの支援がないのに正直失望している。これまでにない市民の抵抗に対し、これまでにない国軍の弾圧が続いている。日本はミャンマーの地をラストフロンティアということで日本企業が相当進出してきたが、今は、みんなが口を閉ざしている。あわよくば国軍下でも続けていこうかな、という雰囲気すら漂う。日本の国民もそうした企業に対してはしっかりとNOを突きつけるべきだと思う。


Q7. ミャンマーの人たちは今、今後をどう考えている?

絶対、国軍には屈しない、という気持ちは強固だと思う。日本に対してはできれば支援してほしい。それが難しいなら、最低でも軍をサポートしたり、肯定したりしないでほしい、という声が多い。去年、クーデター後、どんな弾圧にも負けず、デモをやっていたが、正直、デモをやっても国軍が倒れないのは皆、分かっていた。それでも、絶対屈しない、という気持ち、市民の自由を求める姿を世界に示したかった。非武装で抵抗を続けていたら、世界がきっとサポートしてくれる、と思っていたが、全くダメだった。現在、オンライン上の政府NUGが発足している。日本をはじめとする世界はせめて、これをミャンマーの正式な政府だと認めて、そのように対応していってほしい。やれることはまだまだあるはず。


国軍の弾圧下でも新たな命は生まれている 子どもたちはミャンマーの未来 (Meiさん提供)


Q8. そういえば、4月はミャンマーのお正月。とても祝える状況ではない?

本来であれば、「水かけ祭り」として、1年でもっとも国が盛り上がり、楽しい時期のはず。今年もボイコットしよう、という声も上がっていて、本当に残念。1日も早く、お正月などのお祭りが祝える日々がやってくることを切に願う。


<ミャンマーの予備知識>

・ミャンマーは人口=5400万人、首都はネピドー

・国土は北側は中国、西側はバングラデシュ、東側はタイ、ラオスに面している

・100以上もの民族が共存

・民主化と軍政権による戦いの攻防の歴史

・指導者アウンサンスーチー氏は日本でも有名。彼女は国民民主連盟=NLDを率いているが、拘束、軟禁を繰り返し、2012年にやっと軟禁状態が解かれ、その後、民主化が進んだ

・欧米諸国や日本も企業が続々進出し、自由資本主義が進んでいたが、去年2月、国軍によるクーデターが勃発。アウンサンスーチー氏をはじめ、多くのリーダーたちが次々に拘束されている








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