大統領選挙結果を受けた新聞の表情と若者たち
writer Mari Adachi Editor-in-Chief of Beyond Media
世界が注目したアメリカ大統領選挙。大接戦だと言われていたが、蓋を開けてみるとあっさりトランプ氏が勝利を手にした。
せっかくなので、この選挙をうけ、日米の新聞がどう報じたのか、簡単に記しておきたい。
まず、アメリカの各紙はご覧の通り。友人の在米記者は「見出しがまるで、スターウォーズみたい」と評した。確かに。苦しみが滲み出ているのはニューヨークタイムズ紙ではないか。「トランプの嵐が戻ってきた」。民主党推しのニューヨークタイムズは社説の中でも相当、悲観的だ。
本当に彼でいいのか?国民が選んだんだよ、本当にそれでよかったのか?的な問いを繰り返していた。さらに国民が選んだんだから、これから起こることに国民はひとつひとつ、チェック、監視していく義務があるんだからね、と念を押していた。
その点、ウォールストリートジャーナルの見出しはほとんど諦めなのか、ギャグで対抗している。「トランプ、勝利(=Triumphs)」この見出しが本当に面白い、と思ってつけたわけではなく、私にはなんだか若干ヤケクソ的な感じに映る。
ワシントン・ポストは今回、大きな騒動があった。これまでニューヨークタイムズと並んで民主党を推してきたリベラルな新聞だったのだが、選挙直前の10月に入って、大統領選で特定候補は支持しないと発表したのだ。CNNによると「発表以来、25万人以上の読者が同紙の購読を解約したことが分かった」とのこと。さらに解約はその後も大幅に急増しているとみられる。
さらに、元編集局長を含む元スタッフらは、この決定を「臆病」で「卑劣」と断じている。日本ではちょっと考えられないかもしれないが、主義主張を持つアメリカのメディアでは、ある意味、新しい政権に屈することはそのメディアの存在意義が問われると考える。
ワシントン・ポスト紙オーナーであるアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が、トランプ氏の勝利が見えてきた段階で、先んじて政府からの報復に屈したと専門家などは述べている。
一方、日本の新聞はというと・・・
総じて同じような見出しが並んでいる。日本では公平中立というのが大手メディアの大前提ではあるので、なかなか見出しでは主義主張は出せない。
あえていうと、産経新聞だけが「勝利」という言葉を使っている。他紙はほぼ同じ見出しで「米大統領 トランプ氏」。次の見出しにハリス氏を入れるか、単にアメリカ第一主義を持ってくるか、という違い。
担当国際部長や現地のトップ局長などの論調をみると、日経が「世界を脅かす大国の身勝手」とし危機感を示している。また朝日が「国際秩序どう守る 重い問い」と重い課題に向き合わなければいけない現実を訴え、毎日は「破壊者からの転換を」としてトランプ氏に民主主義の破壊者とはならずに擁護者としての務めを果たしてほしい、と願っていた。
ざっと簡単に新聞を比べてみたが、とにかく若い世代が新聞もテレビも見ない。見なさすぎる。極めて残念なことである。こうした論調比べも楽しいものなのに、それすら考えない。そういう「考えない」ことが最も恐ろしいことだと思うのだが・・・。
ちなみにアメリカでは今、パスポートを取得する人が急激に増えているとのこと。特に若いZ世代たち。新しい政権に嫌気を指し、海外に逃亡あるいは脱出するムードが高まっているという。アメリカの若者、ある意味さすが。「考えない」のと「行動を起こす」のでは大きな違い。
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