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株式市場が世代間対立の場に?
writer Randy Wagenheim Chief Columnist of Beyond Media
昨今の米国株市場が過熱している。もともと世界的なコロナ禍による超低金利の中、金余り状態から一気に株式市場に資金が流れ込んでおり、世界的に株式市場は活況である。中でも米国株の勢いはすさまじいといえる。
1月27日の米国株の値上がり率ランキングをみると、たった1日で株価が3倍、4倍に跳ね上がっている。
1 KOSS 終値 58.0ドル(前日比 +480%)
2 AMC 終値 19.9ドル(前日比 +301%)
3 NAKD 終値 1.38ドル(前日比 +253%)
4 EXPR 終値 9.55ドル(前日比 +214%)
5 GME 終値 347.51ドル(前日比 +199%)
単なる低位株のお遊びでしょ、と思うかもしれないが、いやいやそう単純なものではないようだ。
BBCの記事によると、業績の決して良くない、むしろ言い方は悪いがジャンク的な企業の株が最近高騰しているとのことだ。
例えば値上げ利率ランキングのGamestop(GME)はビデオゲームの店頭でのレンタルや販売を手掛けているが、デジタル時代において最悪のビジネスモデルであり、現段階では将来性に明るさのかけらもない。しかし、業績とは関係なくゲームストップ社の株価はこの1週間ほどで6倍にも跳ね上がっている。
証券アナリストたちは、「テックに精通した若いデイトレーダーたちが、世代間の対立を背景にヘッジファンドに手を出している」と非難している。
GMEだけではなく、Blackberry, AMC, Nokia Oyjisといった一見、過去の遺産的な企業の株価にいま着目している。
それはロビンフッドのような無料および低コストの取引プラットフォームへのアクセスを持つソーシャルメディアのデイトレーダーたちが一斉に仕掛けているのだ。
その舞台はRedditというソーシャルニュースサイトだ。その中にチャットスレッド「wallstreetbets」というのがあり、そこで情報を交換し、株価の高騰を仕掛けているとBBCの記事は指摘している。
株価高騰の裏で何が起こっているか。
それは「空売り」であり、新興勢力である若手ヘッジファンドが、一斉に仕掛けている。
Gamestopはウォール街で最も空売りされている株で、株の約30%がヘッジファンドの借り手の手に渡っていると考えられている。
しかし、Redditの個人投資家は、株買いとオプション取引の狂乱に乗り出し、株価を押し上げ、プロに「ショート・スクイーズ」をさせている。
この過激な取引環境の中で、ウォール街の大口投資家は損失を抑えるために市場に戻ってきており、その需要が価格をさらに押し上げているというのだ。
あたかも単純な「空売り」と「ショート・スクイーズ」の連続で押し上げられているようにみえるが、そうでもない。興味深い側面がある。
中でも面白いのが、「株を売り込むトレーダーたちの奇妙な自警団的なモラルだ」という。「彼らはウォール街を奪い取ることに固執しているように見える、彼らはヘッジファンドを憎んでいるように見える」と記事は示している。
つまり、これは世代間の戦いであり、再分配的であり、金持ちから資産を奪い、ミレニアル世代の貧乏人に与えようとしている、そうした活動なのではないかというのだ。
イーロン・マスク氏も警告?
今をときめく億万長者のテスラのCEO、イーロン・マスク氏もRedditno掲示板のリンクトともに「Gamestonk(賭博屋)=」という言葉をツイートしている。
Redditのサイトは株価操作にあたるのではないかという疑惑も浮上しているようだ。現段階ではRedditは、株価の動きについて当局から特に連絡を受けていないと述べている。また、Redditのサイトポリシーでは、違法なコンテンツを投稿したり、違法な取引を勧誘したり促進したりすることを禁止しており、広報担当者は「我々は必要に応じて有効な法執行機関の調査や措置を検討し、協力していく」と述べた。
米国の主要な金融規制機関である証券取引委員会の元弁護士フレンケル氏は言う。「価格の動きを正当化するための企業活動がほとんどないように見えるところで、意見によって煽られたこのような不安定な取引は、まさにSECの調査対象だろう」と述べた。
しかし、他の専門家は、Redditの大群の投資家は、お金と新しい技術の使用に対する考え方の世代交代を表しているとみている。古いガード(ウォール街)と、台頭してきた個人トレーダーとの間の敵対的な関係が根底にあるのは間違いなさそうだ。
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