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  • 執筆者の写真Beyond Media

ミャンマー 2つの希望とは

更新日:2022年2月6日

writer Mari Adachi Editor-in-Chief of Beyond Media

2021年2月の国軍クーデター以降、国軍による市民弾圧の構図が一向に改善しないミャンマー。世界的な関心は日を追うごとに遠のいている印象がある。この度、Beyond Mediaでは国際協力関係の仕事に従事し、現地に在住のMさんにインタビューをした。インタビューでは日本でも報じられていない国軍の非人道的な暴行などの実態が明らかになった。


都市部は物資もあり、ひとまず生活は安定しているとのことだが、街のあらゆるところで国軍の銃口は市民に向いており、対立姿勢は続いている。

非暴力で徹底抗戦したいという市民たちに、国軍は容赦無く実弾を使う。地方では村を焼き討ちしたり、空爆し、女性や子供たちを殺害した、という痛ましいニュースもこのほど伝わってきた。

2021年11月末時点で、市民の犠牲者数(死者数)は1345名にのぼり、逮捕者は1万人を超えている。犠牲者は今もなお、増え続けている。インタビュー後半をお伝えする。(前半部分はこちら

Q1 ネット環境、いまはどういう状態? 一時期シャットダウンされていたようだが。

今はひとまず一部地域を除いては復活している。もともとは、市民たちが抗議活動をネットワークさせるためにインターネットを利用していたので、それを国軍は遮断していた。しかし、インターネットを止めてしまうと、国としても経済活動が完全にダウンしてしまう事になる。ミャンマーは2012年に民生化されたあと、特に政府はモバイルバンキングを一気に普及させた。CDM(市民的不服従)によって、銀行や政府関係機関などで、職員が仕事を放棄したので、モバイルバンキングが使えないと、経済活動が全く機能しなくなった。そのため、国軍もインターネットを普及せざるを得なくなった。


Q2 ネットバンキングはそれほどまでに普及している?日本よりも進んでいる?

例えば年金なども高齢者も窓口まで出向くのは不便なので、Webマネーで受け取れるようになっていたりする。その辺はとても臨機応変に対応していた。日本も見習える部分があると思う。


Q3 とはいえ、報道手段はかなり制限されている?

インターネットの遮断もあったが、それ以上に報道への締め付けは相当厳しくなっている。メディア各社がライセンスを剥奪したり、ジャーナリトも次々と拘束されている。民間放送はなくなり、今は国営のテレビのみが報道している。これはフェイクニュースばかり。市民たちも全くあてにしていない。


Q4 現在の新型コロナ感染の状況はどうなっている?

表面上は収まっている。去年夏あたりはデルタ株が広がって、病院が全く機能しなくて、死亡者も多かった。自分で酸素ボンベを手配するような状況だった。その後は公的な数字に現れてこないが、まだまだ感染者数は相当数いると思う。公的な病院や施設で検査をすると、何もしてくれない、劣悪な隔離施設に送り込まれてしまうため、公的施設で検査をしない人が増えている。

Q5 公的な隔離施設はそれほどひどい?

公的施設や病院は全て、軍の傘下にある。クーデター前であればそれなりの病院として機能していて、手当をしてくれていたが、今はひどい。ほとんど医者も看護師もいない、さらには薬もない。薬は自分で手配しなくてはならない。入院してしまうと、薬は家族が薬局などから購入しなくてはならず、それでやっと手に入れられる状況。病院食も自分で手配しなくてはならないという酷い状況。なので、公的な施設には入りたくないので、みんな公的な検査をしたがらない。なので、発表数字には反映されない陽性者が相当いると思う。


Q6 ミャンマーの市民はどう受け止めて日々生活している?

民主化の明るい兆しが見えない不安な毎日が続いている。それでもいつかは、いずれは民主化を取り戻す、という希望と自信が全く揺らいでいない。それは近くで見ていてすごいなと感心する。彼らの希望は2つある。一つは国軍を倒そうと、民主派の政府が立ち上がっていること。National Unity Govermentとして一部の国会議員たちが、作られたことは大きな希望。ただ、それは国軍にもちろん標的となるので、実在させるのではなく、オンライン上での架空政府として立ち上がっている。彼らが世界にも現状を伝え、訴えている。日本政府とも連絡が取れていると聞いている。政治的に国連などにアピールしている。


Q7 もう一つの希望とは?

もう一つは民主化のための武装勢力の台頭。もともとは普通の市民だったが、有志が集まり地方の少数民族の武装勢力に弟子入りして訓練を積んでいること。短期間で鍛錬を積んで、国軍と銃撃戦を戦い、支配域を拡大させている。エリア的に支配域を広げていけば、いずれは民主派が勝利できると思わせてくれている。


Q8 世界からの支援というのは届いている?

ミャンマーの人たちは正直、満足していない。特に非武力で戦っていた最初の頃こそ、世界からの支援が本当に必要だった。その時の失望感は強い。国連の声明も「憂慮している」「強い非難」程度でしかなく、実際助けにきてはくれなかった。なので、非暴力、と言っていた市民たちも最近は武器を購入するようになってしまっている。


Q8 日本企業もたくさん進出していたが、それはいまどうなっている?

比較的、操業しているようだ。先日見た統計では撤退が7%、縮小が4分の1、半数以上が操業を続けている、とあった。意外と日本企業はそのまま仕事を続けているようだ。


Q9 いま、日本の皆さんに伝えたいことは?

まだまだ、厳しい状況が続いている。日本とも関係が深いミャンマーのことに関心を持ち続けてほしい。民主化は多分年単位でかかってくると思う。長い戦いになると思うが、実際に戦っているのはミャンマーの人たち。例えばマラソンに例えると、走るのはミャンマーの人たちではあるが、沿道の応援は大きな支えになると思う。応援する声はフェイスブックなどで届けることができる。また、在日ミャンマー人たちの活動にもぜひ、心を寄せてほしいし、サポートしてほしい。


<ミャンマー情報>

ミャンマーは人口約5400万人。首都(ネピドー)。結構、南北に国土は大きく、北側は中国に面しており、東側はバングラデシュ、西側はタイ、ラオスに面している。100以上もの民族が存在している。


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