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  • 執筆者の写真Beyond Media

サスティナブルなオフグリッド生活とは・・・

writer Mari Adachi Editor-in-Chief of Beyond Media

ハワイ島を久しぶりに訪れた。いつぶりだろう。20年ぶりくらいだろうか。一見、街は大きくは変わっていないようだった。しかし、度重なる火山の噴火により島の面積は拡張していたり、道路が一部寸断されていたり、そしてまた新しい町ができていたり・・・。どこの家にもソーラーパネルが付いていたりと島はなんだか変化、そして進化していた。


今回、私たちはハワイ島最大都市であり、ハワイ州でホノルルに次いで人口の多いHiloという町から車で20分ほどのHonomuというところに滞在した。Air BnBでワンコOKという一軒家を借りた。その家は3ベッドルームで、大人9人まで泊まれるとても広い平屋だった。


周りは農場に囲まれ、さまざな動物が楽しそうに飛び回っていた。ウシ、ヤギ、ニワトリ、七面鳥、ウサギ、犬、ブタなどなど。筆者が連れて行ったワンコ2匹はもう大興奮だった。今まで見たこともない動物たちが自由に歩き回っていたからだ。


そして、なんと言ってもこの家はとてもサスティナブルだった。電気、水道などの公共インフラ網を利用しない「オフグリッド住宅」だった。日本ではなかなかお目にかかることのできない貴重な体験を今回させてもらった。


電気もお湯も全てソーラーシステムを利用している。水は全て雨水を利用。なんとなく頭では理解できてはいたが、実感はできていなかった。


オーナーのサンドラさんは私たちの宿に隣接する家に住んでいた。初日、彼女は言った。「最近、天気が悪いのよ・・・。途中で電気が切れるかも。切れたらごめんなさいね」。なんだかちょっと嬉しそうであり、誇らしげだった。聞いてみるとハワイ島のおよそ8割の家庭がこうした「オフグリッド住宅」に住んでいるのだという。すごい、8割もの家でお天気頼みの生活をしているの?


2023年に入って、1月はほとんどハワイ島で雨が降らなかったらしい。晴れることももちろん大切だが、雨が降ることはもっと大事なんだそうだ。夜は電気がつかなければロウソクがあるけど、水がない時は本当に生活に困る、とサンドラさんは言う。私たちは聞いていて、あまりピンと来なかった。単に大変そうだなあ、とだけ思った。


宿には時計もなかった。こういうところに来たら、時間は気にするな、ってことだろうか。冷凍庫には「生ゴミはこちら」という青い小さいバケツが入っていた。飼料、肥料用にリサイクルするらしい。農場の肥やしになるのか。そっかあ、生ゴミはこうして保存すればいいのね・・。勉強になった。

翌朝、宿のドア横には朝の産みたて卵が置かれたいた。そんな些細なことに感動した。農場の人たちにとっては毎日の当たり前が、私たちにとっては嬉しい。そういえば今、アメリカでは卵が最もインフレの影響を受けていて、この1年で倍以上の値段になっているという話を聞いていた。なんと素敵なんだろう、産みたての新鮮な卵が朝から食べられるとは。サスティナブルな生活に農場生活。部屋からは海も一望できる。こんなところでずっと住んでみたい、そう思わせる瞬間だった。新鮮な卵をどうやって食べよう?みんなで考えて、結局茹で玉子にすることにした。新鮮な卵はやっぱり黄身の濃さが違った。

滞在して4日目、その日は終日豪雨だった。島内観光をして部屋に戻ってくると、オーナーのサンドラさんは「今日は多分、お湯がそんなに出ないと思う。シャワーを浴びるなら、浴びる20〜30分前に教えて。そうしたら発電機でお湯をちょっと温めるから」と言ってくれた。あ〜、天気が悪いとお湯ができないのだ。そう言われてみればそうだ。


早めの夕食を宿で済ませ、シャワーのお湯を発電機で作ってもらい、ささっとシャワーを済ませると、突然、電気が落ちた。これだ!サンドラさんが言っていたのは。天気が悪いと電気もまかなえない、そういうことね。(シャワーを浴びておいてよかった!)突然の真っ暗闇が宿にやってきた。携帯電話の明かりを頼りにロウソクを探す。そもそもロウソクってどれくらいのサイズだとどれくらいの時間、持つのだろう?キャンプに行ったこともない筆者は検討もつかなかった。

一番大きめなロウソク(直径15cmほどのバケツ型のロウソク!)を探して、さあ火をつけようと思ったら、今度は火がない。ガスコンロからつけようと思ったら、コンロが電気手動ということで火がつかない。どこかに着火ライターがあったはず・・・暗闇の中、探してみたが見当たらなかった。電気がないと本当に不便である。大げさかもしれないが自分の無力さを思い知った。


その後、ちょっとの間電気が戻ったので、その間にガスコンロからロウソクの火をつけておいた。するとまた停電した。もうロウソクに火が灯っているので、怖いものはない。ロウソクの火がこれほどありがたいと思ったことはなかった。しかもとても明るい。意外と使えるのだと知った。


そんな夜を過ごし、翌朝は快晴。改めてお天道様の有り難みを知った。それにしてもハワイ島の住民の多くはこんな生活をしているのだろうか。調べてみるとハワイが自然エネルギーに大きく舵を切り始めたのが2008年ごろだという。石油価格が大幅に上昇した時期だ。アメリカ本土からは4000キロと遠く離れているハワイ州は、資源に乏しいため、エネルギーに限らず全てを輸入している。特に石油価格の上昇は大きな打撃だった。


ハワイ州政府は直ちにHCEI(ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ)を打ち出し、法律及び規制を制定し、ハワイ州と米国エネルギー省が、輸入化石燃料に大きく依存するハワイ州のエネルギー削減を共同で行うという画期的な覚書に署名した。ハワイ州の自立型のエネルギー政策が2008年、スタートした。


こうした取り組みから特にハワイ島では自然エネルギーへの意識が高まり、多くの家庭でオフグリッド生活が始まったらしい。


石油に依存しないSDGsな取り組みである上に、環境にもお財布にも優しいが、実際の生活にはとても不便なことも多い。それでも石油依存型のエネルギーから自然エネルギーに大転換させているハワイ島は素晴らしい。これは一度は体験してみることをお勧めする。当たり前の日々の電気や水道が、実はどれだけ恵まれていることなのか、しみじみと分かる。それと同時に、それを生み出すのにどれだけ環境に負荷をかけているのかも分かってくる。


簡単にSDGsだ、サスティナブルだ、と日本では言葉ばかりがもてはやされているが、体験するのでは大違い。エネルギー政策について考えることも多くなり、実現性への道のりについても深く洞察することに繋がる。今回のハワイ島の滞在はとても有益だった。








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