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【続報】新展開:米の「オンライン授業だけ履修の留学生は滞在不可」について

更新日:2020年7月18日

writer Mari Adachi Editor-in-Chief of Beyond Media

7/14 続報:

アメリカ政府、留学生のビザ規制方針を撤回 オンライン授業でも滞在可能に

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7/6 新展開:

7月6日にアメリカの移民・関税執行局(ICE)が「この秋からの新学期に、オンラインの授業しか履修しない外国人留学生には米国内の滞在を認めない」と発表した旨の記事を公開したが、これについて新たな展開をみせている。


本日、8日にハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)がICEの決定を不服として、ICEと国家安全保障省を提訴したのだ。


ハーバード大学のバカウ総長は、ICEの新規定について「学生や教員らの健康や安全に対する懸念を顧みることなく、この秋、教室で対面講義を開くよう大学側に強制的に圧力をかけている」と、声明で批判した。


ハーバード大学は新型コロナの影響を考慮し、学生たちの安全面を優先させるために、この秋以降もオンラインでの授業を表明していた。フレッシュマン(新入生)を中心に、キャンパス内には上限40%までの人数を登校あるいは寮で滞在可能とし、その他の学生はオンラインでの遠隔授業を展開する方針だった。


またMITも声明で「MITの強みは人。それがどこから来た人であっても。教育を受けることに興奮しながらも、家族と何千マイルも離れていることへの不安、というのを身をもって知っている。世界で最も優秀で才能があり、やる気のある学生を歓迎することこそが、アメリカの本質的な強みである」と述べている。


訴状では、アメリカ政権が非常事態の終結宣言をしていないにもかかわらず、ICEが留学生へのビザ発給制限を決め、しかも大学側に全く予告もなしに、3月のガイドラインを無効としたのは承諾できないとしている。


また対面とオンライン授業をミックスしたハイブリッドスタイルでの授業を発表しているプリンストン大学も今回のハーバード大学とMITの提訴を全面的にサポートするという声明を発表。アイビーリーグを巻き込んでの大きな動きになりつつある。


ハーバード大学のリリース

プリンストン大学のリリース


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<7月7日の記事>


アメリカの移民・関税執行局(ICE)が7月6日に「この秋からの新学期に、オンラインの授業しか履修しない外国人留学生には米国内の滞在を認めない」と発表した。


このニュースの見出しだけが駆け巡り、世界的に大きな騒ぎとなっている。


しかし、冷静に考えてみたい。


もともと、ICEはオンラインだけの生徒には留学生のビザ(F1ビザ)や研究用ビザ(M1ビザ)を出していない。新型コロナが発生するまでは、基本、1学期にオンライン授業は1科目のみ、などの規定を設けている。つまり、これまでもオンラインの授業は多く存在していたが、そればかりを取ることは許されていなかったのだ。


それが、新型コロナの影響で、今年の春学期以降はアメリカのほとんどの大学はオンラインでの授業となったことから、特例としてICEはオンライン授業ばかりでも留学生ビザの維持を認めていた。今回、それを元に近い形に戻したという流れだ。


ここで2つに分けて考えよう。


① この秋からは通常の対面授業を再開すると発表している大学が多い。それでもなお、オンライン授業ばかりを選択するのであれば、留学ビザは停止しますよ、だから自国に帰って、そちらから履修してください、というもの。通常の対面授業が再開しているので、当然、そちらを優先して履修していけば、留学生ビザは維持できる。これはコロナ前も同じ状況。


② 秋以降も留学先の大学が全ての授業をオンラインで実施する場合、そこ留学生はそのまま、アメリカにはいられない。自国に帰るか、大学をトランスファー(転校)して普通の対面授業のある学校で、対面授業を履修し留学生ビザをキープするか。


①の場合は簡単。対面授業を履修すればよいだけ。

問題は②である。


ハーバード大学など一部の大学は、この秋以降もすべてオンラインで授業をすることを明らかにしている。これはこれで、とても先進的である。遠いアフリカからでも、ハーバードの一流授業が受けられる、というのはとても素晴らしいことだ。


しかし、ここに今回メスが入るわけだ。すべてオンラインで授業、というのに留学生ビザが果たして必要かどうか、という議論なのだ。実はこの問題、今に始まったことではない。


コロナ以前からハーバードを始め、アメリカの多くの大学ではオンライン授業を取り入れ、どこにいても授業を提供できるように整備してきた。その流れはコロナでより加速したといえる。今後、オンラインだけの大学も多数出てくるかもしれない。そうしたオンライン大学に留学生ビザは必要なのか?というのがICEの見解である。


アメリカの大学はアメリカ人であるのと、留学生であるのでは、状況が全く違う。


アメリカ人であれば、基本、オンライン授業だけでも卒業証書(学位取得)が授与される場合が多い。しかし留学生はそうでない。オンラインでの授業だけではサティフィケート(証明書)しか得られないケースが基本。


それが今回のコロナでなし崩し的に留学生もオンラインで卒業証書を取得できるようになってしまう可能性がある、という点もICEは危惧している。


留学生ビザの基本、アメリカに来て、大学で対面授業を受け、交流し大学生活を通じて勉学に励み、アメリカ文化や生活を体感する、という点を守りたいのがICEの姿勢。これはかなり建前的なものもありそうではある。実際、オンライン大学で誰が一番利益を得るかというと、どうやシリコンバレー系企業やネットワーク、IT企業だ。州立大学などであれば、多額の給付金などの資金を投入している州政府としては、その資金がIT企業にいくのは放っておけない、というのが本音かもしれない。


しかし、そんな裏事情はともかくとして、大学側も経営的な観点からすると、留学生がドル箱であるのは事実。大学の授業料はアメリカ人でも相当額であるのに、留学生はさらに高額だ。普通に留学生に戻ってきてもらうほうが大学としても得策なのだ。


留学生のためだけではないが、この秋以降、多くの大学は対面授業を再開させる。大学側も政府発表の直後に、素早く留学生向けに早速メールを送信したり、声明を発表している。


The headlines are shocking and dramatic, but they are not necessarily accurate.

(ヘッドラインはショッキングでドラマティック、でもそれは必ずしも正しくはない)


アメリカの西海岸の大学ではこのようにメールを留学生に送った。さらに留学生をキックアウトするようなことはない、との姿勢をみせている。


While the government's plan is quite a bit more restrictive than we anticipated, we hope no one will actually be "forced out" (Reuters).

(政府発表は従来よりちょっとだけ制限が厳しくなっただけ。私たち大学は誰も”強制退去”がないことを望んでいる)


実際、9月から始まる新学期の履修登録がいま始まっている。アメリカに滞在している留学生たちも多くが冷静に判断し、通常の授業登録をしているという。オンラインのみの授業を表明しているのは、約1割程度。ただ、今回のICEの決定を受け、リアルな対面授業に切り替える大学も増えるかもしれない。


日本から来ている、あるいはこれから渡米する留学生は、対面授業のクラスを履修さえすれば特に問題はない。オンラインしか実施しない大学については、判断が迫られるが、留学で自分が何を本当に学びたいのか、を問い直す良い機会かもしれない。単に学問だけなのか、あるいはアメリカの生活、文化、人的交流なのか。


今一度、冷静に考えて判断すれば、焦る必要はない。


ICEのプレスリリース:

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